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【検証】マーチンゲール法(倍賭け)は本当に勝てないのか? 破産確率をシミュレーションで実証してみた

カテゴリ:カジノ数学 | 検証:モンテカルロ・シミュレーション(ヨーロピアンルーレット・各条件30万セッション)

「負けたら倍賭け。いつか勝てば全部取り返せる。だから理論上は絶対に負けない」――マーチンゲール法は、ネットでもっとも“必勝法”として紹介される賭け方だ。本当にそうなら、世界中のカジノはとっくに潰れている。では実際は? 資金10万円のプレイヤーに、コンピュータで何十万回も挑戦させてみた。

先に結論

マーチンゲール法は「勝率」は上げるが「期待値」は1ミリも改善しない。短期では高確率で小さく勝てる。だが、いつか必ず来る連敗で資金がまとめて吹き飛ぶ。今回の検証では、+1万円を狙うと83%が成功する一方、17%が平均約5.9万円を失った。トータルの期待値はマイナスのまま。むしろベット総額が膨らむぶん、長く続けるほど損失は積み上がる。

「83%も勝てるなら良くない?」と思うかもしれない。その違和感の正体を、これから数字で分解していく。

マーチンゲール法とは? 仕組みを30秒で

ルーレットの「赤か黒か」のような、当たれば2倍(配当1:1)の賭けで使う。やり方はシンプルだ。

  • 最初は1単位(例:1,000円)賭ける
  • 負けたら、次は倍(2,000円→4,000円→8,000円…)にする
  • 勝ったら、最初の1単位に戻す

こうすると、何連敗しても1回勝てばそれまでの負けを取り返し、必ず最初の1単位ぶん(1,000円)だけ儲かる――というのが理屈。算数としては正しい。問題は、その理屈が成立する「前提」のほうにある。

そもそもの前提

ルーレットの「赤」が当たる確率は2分の1ではない。ヨーロピアン(0が1つ)で18/37 48.6%。「0」のぶんだけ、わずかにハズレ側に傾いている。これが控除率=2.70%。アメリカン(00もある)なら控除率は5.26%と倍近い。どんな賭け方をしても、この傾きは消えない。

実況:Aさんが10万円でマーチンゲールに挑んだ夜

百の説明より、1人のプレイヤーを追ったほうが早い。資金10万円、最小ベット1,000円、ヨーロピアンルーレット。目標は「+1万円勝ったら帰る」。実際のシミュレーションから、ありがちな1セッションを抜き出した。

Aさんの1セッション(赤に賭け続ける)

1回転目1,000円LOSE残高 99,000円
2回転目2,000円LOSE残高 97,000円
3回転目4,000円WIN残高 101,000円
4回転目1,000円WIN残高 102,000円
5回転目1,000円LOSE残高 101,000円
6回転目2,000円WIN残高 103,000円
7回転目1,000円WIN残高 104,000円
8回転目1,000円LOSE残高 103,000円
9回転目2,000円LOSE残高 101,000円
10回転目4,000円LOSE残高 97,000円
11回転目8,000円LOSE残高 89,000円
12回転目16,000円LOSE残高 73,000円
13回転目32,000円LOSE残高 41,000円 → 次は64,000円が必要だが払えない=破産

7回転目まで、Aさんは順調だった。コツコツ勝って+4,000。「これ、いけるじゃん」と思った瞬間だ。ところが8回転目から赤が6連続で来ない。倍々で膨らんだベットが資金を食い尽くし、13回転目に32,000円を失った時点で、次に必要な64,000円が用意できなくなった。結果は −59,000。それまでの小さな勝ちが、たった一度の連敗で消し飛んだ。

これがマーチンゲールの正体だ。「ほとんどの夜は気持ちよく小勝ちし、ときどき一晩で大敗する」。そして大敗の一撃が、それまでの小勝ちの合計をはるかに上回る。

30万回やったら、こうなった

Aさん1人では運かもしれない。そこで、目標金額を変えて各30万セッションずつ回した結果がこれだ(資金10万円・最小1,000円・ヨーロピアン)。

目標利益達成率破産率破産時の平均損失1回あたり平均損益
+10,000円で帰る82.9%17.1%−58,657円−1,580円
+20,000円で帰る68.8%31.2%−54,123円−2,892円
+50,000円で帰る48.5%51.5%−59,969円−6,345円

読み取れることは2つ。欲を出すほど破産率が跳ね上がる。+1万円なら破産17%で済むが、+5万円を狙うと2回に1回は破産する。どの目標でも、平均すると必ず負けている。「達成率83%」の裏で、平均損益はしっかりマイナスだ。

KEY POINT

この「平均損益」を、各セッションのベット総額で割り戻すと、いずれも2.672.72%。つまりヨーロピアンルーレットの控除率2.70%に、ぴたりと収束する。賭け方をどう工夫しても、長期の負け率はテーブルの控除率そのもの。マーチンゲールは控除率を1ミリも変えられていない。

なぜ「理論上負けない」が嘘になるのか

マーチンゲールの理屈が破綻する理由は、突き詰めると3つだ。

1. 11回のスピンが、ずっとマイナスのまま。赤に賭けるたび、あなたは平均2.70%ぶん損をしている。何回賭けようと、その損は薄まらず積み上がる。むしろマーチンゲールは賭ける回数と金額(ベット総額)を増やすので、トータルの期待損失はかえって大きくなる。

2. 資金とテーブル上限は有限。「無限に倍賭けできれば、いつか必ず勝つ」のは事実。だが現実の資金は10万円で尽きる。今回の設定だと、6連敗(1+2+4+8+16+3263,000円を失う)した時点で、次の64,000円が出せず破産する。6連敗の確率は1回あたり約1.8%と低いが、何百回も賭ければ「いつか必ず」訪れる。低確率は、ゼロではない。

3. 払い戻しが歪に非対称。勝つときは+1,000円ずつチビチビ。負けるときは−6万円がドカン。この形は、宝くじを裏返したようなもの。「高確率で少し得して、低確率で大損する」――胴元に都合のいい構造そのものだ。

Kaiのメモ

「俺の友達はマーチンゲールで勝った」という話は、たぶん本当だ。なにせ1回あたり83%は勝てる。問題は、勝った話だけが残り、破産した夜は語られないこと。これを生存者バイアスという。

83%で小さく勝てる賭け方は、人間にとってめちゃくちゃ気持ちいい。だからこそ危ない。マーチンゲールが上げているのは「勝つ確率」であって「勝つ金額の期待値」ではない。この2つの違いを直感は区別してくれない。だから数字で見るしかない。

責任あるギャンブルのために

マーチンゲール法は「破産確率と引き換えに、高い勝率を演出する」だけの賭け方で、長期の期待値を改善する効果はありません。むしろ連敗時に冷静さを失い、用意した予算を一気に超えるリスクが高い手法です。遊ぶなら、失っても問題ない金額をあらかじめ決め、倍賭けで取り返そうとしないこと。取り返そうとする心理こそが、最も大きな損失を生みます。

よくある質問(FAQ)

マーチンゲール法は違法ですか?

賭け方自体は違法ではありません。ただしカジノ側は「ベット上限(テーブルリミット)」を設けることで、無限の倍賭けを物理的に封じています。上限に達した時点で連敗を取り返せなくなり、マーチンゲールは機能を失います。

何連敗したら破産しますか?

資金や最小ベットによります。資金10万円・最小1,000円なら、6連敗(合計63,000円の損失)した時点で次の64,000円が払えず破産します。6連敗の確率は1回あたり約1.8%ですが、プレイ回数を重ねるほど遭遇確率は上がっていきます。

逆マーチンゲール(パーレー法)なら勝てますか?

勝ったら倍賭けする「逆マーチンゲール」は、大勝ちを狙う代わりに高確率で小さく負ける、リスクの形が逆になった手法です。こちらも控除率(期待値)は一切変わりません。連勝が途切れた瞬間に利益を吐き出す構造です。

ヨーロピアンとアメリカン、どちらで遊ぶべき?

「0」だけのヨーロピアン(シングルゼロ)一択です。「00」もあるアメリカンは控除率5.26%と、ヨーロピアン2.70%の約2倍。同じ賭け方でも長期の負けが倍近くになります。

まとめ:マーチンゲールは「勝率の錯覚」を買う行為

マーチンゲール法は、必勝法ではない。控除率という名の傾きを、賭け方で打ち消すことは原理的にできない。それができるのは、本来マイナスの期待値をプラスに変えられる仕組み――たとえばブラックジャックの基本戦略やカードカウンティングのような「選択でルールに介入できるゲーム」だけだ。ルーレットには、その余地がない。

マーチンゲールが提供してくれるのは「高い勝率という快感」であって、「勝てる数学」ではない。その違いを知ったうえで、娯楽として楽しむぶんには問題ない。ただ、「理論上負けない」という言葉だけは、もう信じなくていい。

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