【検証】マーチンゲール法(倍賭け)は本当に勝てないのか? 破産確率をシミュレーションで実証してみた

「負けたら倍賭け。いつか勝てば全部取り返せる。だから理論上は絶対に負けない」――マーチンゲール法は、ネットでもっとも”必勝法”として紹介される賭け方です。本当にそうなら、世界中のカジノはとっくに潰れているはず。では実際は? 資金10万円のプレイヤーに、コンピュータで何十万回も挑戦させてみました。

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EV LAB SIMULATOR — 02
マーチンゲール破産シミュレーター
「負けたら倍賭け、勝てば取り返せる」——その戦略を1,000人が実行したら何が起きるか。
軍資金
初期ベット
目標利益(達成で離席)
テーブルリミット
¥50万
¥100万
なし
1,000人でシミュレーション開始
資金の推移(代表1人) そのときのベット額(倍賭けの階段)
結果
目標達成して離席できた人
破産・続行不能になった人
失敗時の平均損失
1,000人の平均収支
マーチンゲールは「高確率で小さく勝ち、低確率で全てを失う」よう損益の形を変えるだけで、期待値そのものは1ミリも動かせません。確かめてみてください。
N連敗に必要な資金 = 初期ベット × (2^N − 1) Monte Carlo 1,000 sessions / EV Lab

この記事の結論

  • マーチンゲール法は「勝率」は上げるが「期待値」は1ミリも改善しない
  • +1万円狙いで82.9%が成功する一方、17.1%が平均約5.9万円を失う
  • 平均損益をベット総額で割ると、必ず控除率2.70%に収束する
  • 勝率の高さは破産の先送り。長く続けるほど損失は積み上がる
理論面の解説はマーチンゲール法が勝てない本当の理由もあわせてご覧ください。

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「10連敗なんてありえない」——本当に? 自分の目で確かめてください。
コイントス 50%
ルーレット赤黒 48.6%
クラップス 49.3%
高勝率 80%
100回
300回
1000回
回す

マーチンゲール法とは? 仕組みを30秒で

ルーレットの「赤か黒か」のような、当たれば2倍(配当1:1)の賭けで使います。1単位賭けて負けたら2単位、また負けたら4単位……と倍にしていき、一度勝てばそれまでの負けを取り返して、必ず最初の1単位ぶんだけ儲かる、というのが理屈。算数としては正しい。問題は、その理屈が成立する「前提」のほうにあります。

赤の確率は2分の1ではない
ヨーロピアンルーレット(0が1つ)で赤が当たる確率は18/37 ≒ 48.6%。「0」のぶんだけ、わずかにハズレ側に傾いています。これが控除率2.70%。アメリカン(00もある)なら5.26%と倍近い。どんな賭け方をしても、この傾きは消えません。詳しくはルーレットのハウスエッジへ。

実況:Aさんが10万円で挑んだ夜

百の説明より、1人のプレイヤーを追ったほうが早い。資金10万円、最小ベット1,000円、ヨーロピアンルーレット、目標は「+1万円勝ったら帰る」。実際のシミュレーションから、ありがちな1セッションを抜き出しました。

7回転目まで、Aさんは順調でした。コツコツ勝って+4,000円。「これ、いけるじゃん」と思った瞬間です。ところが8回転目から赤が6連続で来ない。倍々で膨らんだベットが資金を食い尽くし、13回転目に32,000円を失った時点で、次に必要な64,000円が用意できなくなりました。結果は−59,000円。それまでの小さな勝ちが、たった一度の連敗で消し飛んだのです。

これがマーチンゲールの正体です。「ほとんどの夜は気持ちよく小勝ちし、ときどき一晩で大敗する」。そして大敗の一撃が、それまでの小勝ちの合計をはるかに上回ります。

30万回やったら、こうなった

Aさん1人では運かもしれない。そこで、目標金額を変えて各30万セッションずつ回した結果がこれです(資金10万円・最小1,000円・ヨーロピアン)。

目標利益達成率破産率破産時の平均損失1回あたり平均損益
+10,000円で帰る82.9%17.1%−58,657円−1,580円
+20,000円で帰る68.8%31.2%−54,123円−2,892円
+50,000円で帰る48.5%51.5%−59,969円−6,345円

読み取れることは2つ。①欲を出すほど破産率が跳ね上がる。+1万円なら破産17%で済むが、+5万円を狙うと2回に1回は破産する。②どの目標でも、平均すると必ず負けている。「達成率83%」の裏で、平均損益はしっかりマイナスです。

KEY POINT
この「平均損益」を、各セッションのベット総額で割り戻すと、いずれも2.67〜2.72%。つまりヨーロピアンルーレットの控除率2.70%に、ぴたりと収束します。賭け方をどう工夫しても、長期の負け率はテーブルの控除率そのもの。マーチンゲールは控除率を1ミリも変えられていません。

なぜ「理論上負けない」が嘘になるのか

マーチンゲールの理屈が破綻する理由は、突き詰めると3つです。

  1. 1回1回のスピンが、ずっとマイナスのまま:赤に賭けるたび、平均2.70%ぶん損をしています。何回賭けようとその損は薄まらず積み上がる。むしろマーチンゲールはベット総額を増やすので、トータルの期待損失はかえって大きくなります。
  2. 資金とテーブル上限は有限:「無限に倍賭けできればいつか勝つ」のは事実だが、現実の資金は10万円で尽きる。今回の設定だと6連敗(合計63,000円)で次の64,000円が出せず破産。6連敗の確率は1回約1.8%と低いが、何百回も賭ければ「いつか必ず」訪れます。
  3. 払い戻しが歪に非対称:勝つときは+1,000円ずつチビチビ、負けるときは−6万円がドカン。「高確率で少し得して、低確率で大損する」――胴元に都合のいい構造そのものです。

よくある質問(FAQ)

Q:マーチンゲールは違法?
A:賭け方自体は違法ではありません。ただしカジノ側は「ベット上限(テーブルリミット)」で無限の倍賭けを物理的に封じています。上限に達した時点で連敗を取り返せなくなり、マーチンゲールは機能を失います。

Q:何連敗で破産する?
A:資金や最小ベットによります。資金10万円・最小1,000円なら、6連敗(合計63,000円)で次の64,000円が払えず破産。6連敗の確率は1回約1.8%ですが、プレイ回数を重ねるほど遭遇確率は上がります。

Q:逆マーチンゲール(勝ったら倍)は?
A:大勝ちを狙う代わりに高確率で小さく負ける、リスクの形が逆になった手法です。こちらも控除率(期待値)は一切変わりません。

Q:どのルーレットを選ぶべき?
A:「0」だけのヨーロピアン一択です。「00」もあるアメリカンは控除率5.26%と、ヨーロピアン2.70%の約2倍になります。

Kai の観察
「俺の友達はマーチンゲールで勝った」という話は、たぶん本当です。なにせ1回あたり83%は勝てる。問題は、勝った話だけが残り、破産した夜は語られないこと。これを生存者バイアスといいます。83%で小さく勝てる賭け方は、人間にとってめちゃくちゃ気持ちいい。だからこそ危ない。マーチンゲールが上げているのは「勝つ確率」であって「勝つ金額の期待値」ではない。この2つの違いを、直感は区別してくれません。だから、数字で見るしかないのです。

責任あるギャンブルのために
マーチンゲール法は「破産確率と引き換えに高い勝率を演出する」だけの賭け方で、長期の期待値を改善する効果はありません。むしろ連敗時に冷静さを失い、用意した予算を一気に超えるリスクが高い手法です。倍賭けで取り返そうとする心理こそが、最も大きな損失を生みます。止め時の作り方は責任あるギャンブル|期待値で考える「止め時」へ。

まとめ:マーチンゲールは「勝率の錯覚」を買う行為

マーチンゲール法は、必勝法ではありません。控除率という名の傾きを、賭け方で打ち消すことは原理的にできない。それができるのは、本来マイナスの期待値をプラスに変えられる仕組み――ブラックジャックの基本戦略やカードカウンティングのような「選択でルールに介入できるゲーム」だけです。ルーレットには、その余地がない。マーチンゲールが提供するのは「高い勝率という快感」であって、「勝てる数学」ではありません。その違いを知ったうえで娯楽として楽しむぶんには問題ありませんが、「理論上負けない」という言葉だけは、もう信じなくていいのです。

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この記事を書いた人

確率と期待値で、ギャンブルの「本当のところ」だけを書いている。
カジノもパチンコも、長く続ければ胴元が勝つように出来ている——それを感情抜きに、小数点まで計算して確かめるのが期待値ラボ。
勝ち方は教えない。扱うのは「なぜ人は、わかっていても負けるのか」。最初のサンプルは、たぶん自分自身。